緩和ケアはどこで受けられる?
自宅で往診や訪問看護を受けながら緩和ケアを受ける
自宅で往診や訪問看護を受けながら緩和ケアを受ける
病院への通院が難しい方などは、医師の往診や訪問看護を受けながら、住み慣れた自宅で過ごすことができます。訪問の医師は病院の主治医と連携を図りながら、痛みの治療など必要な緩和ケアを行います。訪問看護では医師との連携のもと、必要な医療的ケアのほか、入浴の介助や排泄ケア、床ずれの予防・処置など、自宅療養に必要な援助を受けることができます。
家族ががんになったら知っておきたい緩和ケア
在宅緩和ケアの紹介
高齢の患者さんが、がんを患った場合には、体力の問題から手術も抗がん剤治療も行われない場合があります。今回ご紹介する胃がんを患った男性もその一人でした。この患者さんは体調面から入院を勧められましたが、自宅で過ごしたいと入院しない選択をしました。入院をせずに、がんと向き合い生きるとはどんな選択なのでしょう。
令和3年度厚生労働省委託事業
緩和ケア体験談 ご自宅でも受けられる緩和ケア
緩和ケアとつながることができて、「死」についてのイメージが少し変わった
大腸・直腸がん / 70代 / 女性
(ご家族)2018年12月、母の大腸がんが発覚し、翌月に手術をしました。そのあとすぐ、抗がん剤治療も始まりましたが、腹膜...
いかに患者の生活の質を向上させるかが緩和ケアの本質
その他のがん / 70代 / 女性
(ご家族) 私の母は、がんの診断を受けてから、入院と通院を繰り返しながら抗がん剤によりがんの治療を続けていました。約3年...
余命宣告より3倍以上生きられたのは緩和ケアに切り替えたから
その他のがん / 80代 / 男性
(ご家族)忘れもしない2019年10月13日。「お父さんに殺される!」母からの電話だった。何を言っているのか訳がわからな...
緩和ケアとつながることができて、「死」についてのイメージが少し変わった
大腸・直腸がん / 70代 / 女性
(ご家族)
2018年12月、母の大腸がんが発覚し、翌月に手術をしました。そのあとすぐ、抗がん剤治療も始まりましたが、腹膜播種となり、いくつかの抗がん剤を試しましたが、思ったような結果は出ず、2020年夏ごろから緩和ケアの在宅医にも併用して かかるようになりました。
緩和ケア=死というイメージが母はあったかもしれませんが、私はいろいろな情報を集めていた過程で、緩和ケアに早くつながりたいと思っていたので少し安心しました。母も大病院の主治医とは違って、緩和ケアの在宅医がパソコン画面ではなく、母の目を見て診察をしてくださることに安心していた様子でした。
その年の12月、急に母の体調が悪化し、抗がん剤治療は中止となり、緩和ケアの在宅医のみにかかることとなりました。その際、大病院の主治医や看護師は緩和ケアのある病院へ入院することを強く勧めてきましたが、コロナの影響もあり、病院に入院すると母に思うように会えないのではないかと思い、家で母をみることはできないかと相談してみました。そうすると、主治医は「あなたが24時間お母さんをみれる の?」と言い、その言葉にショックと腹ただしさ でいっぱいになり、その足で、緩和ケアの在宅医に相談しました。もちろん母の意向も聞きましたが、はっきりとした返事を得ることはできませんでした。今思えばすぐに答えを出すことはできなかったのだと思います。治療ができない=死が近いと思ってショックだったのだと思います。
在宅医は「病院でしかできないことはない。家でもちゃんとできますよ」と言ってくださり、訪問看護にもお世話になり、私も介護休暇を取り、自宅で母のサポートをしました。
母は12月末に亡くなりましたが、緩和ケアの在宅医が往診に来るときはとても元気でした。在宅医の顔を見ると安心していたようです。その様子を見て、在宅医は最期の1週間、ほぼ毎日顔を出してくださり ました。私たち家族もとても心強かったです。最期まで人間らしく、母らしく過ごせたのは緩和ケアがあったからこそです。
死は必ず訪れます。大事な人が死ぬと思うともちろん悲しい、つらい気持ちでいっぱいですが、緩和ケアとつながることができて、「死」についてのイメージが少し変わった気がします。母が最期まで生ききることができ、1秒1秒が愛しい時間でした。そんな風に思えたのも緩和ケアがあったからです。
いかに患者の生活の質を向上させるかが緩和ケアの本質
その他のがん / 70代 / 女性
(ご家族)
私の母は、がんの診断を受けてから、入院と通院を繰り返しながら抗がん剤によりがんの治療を続けていました。約3年半経過したあたりで抗がん剤による体力低下が著しくなり、治療を続けることが困難になりました。治療の主治医からこの時点で余命3ヶ月と宣告され、緩和ケア科のある病院に転院しての療養に切り替えることとなりました。
緩和ケア療養に切り替えてから、がんの治療をしていないにもかかわらず体調が徐々に回復していきました。治療を中止したことで抗がん剤の強い影響がなくなったこと、適切な痛み止めによる緩和が功を奏したと思われます。想定以上に元気になったせいか、療養病棟で過ごすことに苦痛を感じる程となったため、約半年経過後に自宅療養に切り替えました。
ただ自宅療養するということは、私が母の介護を直接行わなければならず、経験のない私は介護ができるのだろうかという不安を強く感じていました。しかし緩和ケア科と訪問看護スタッフやケアマネージャーの連携と協力により、経験のない私でも安心して母の介護に専念することができました。
緩和ケア科には月1回の通院で対応し、処方された痛み止めのシールを毎日交換しながら痛みのない状態を保つことで、穏やかに自宅療養を続ける事が出来ました。自宅に戻ったことで生きる気力も再び湧き、好きだったカラオケ仲間との集まりにも行けるようになり、とても余命3ヶ月と言われた患者とは思えないほどの回復ぶりでした。
1年を過ぎて少しずつ体力が落ち始め外に出ることは少なくなり、2年を過ぎたあたりで痛み止めの効き目が落ちてきました。病気の性質上、骨に影響が出るため、緩和ケア科から院内の整形外科を紹介され、まだ体力的に適応できるということから骨を支持する手術を行いました。それにより強い痛みは緩和され、更に自宅療養を続ける事ができました。
手術以降は緩和ケア科による訪問診療に切り替え、主治医が2週間に1回、自宅に訪問していただき診察することができました。そしてそれから約半年後に天寿を全うすることとなりました。看取りの際は夜中にもかかわらず、訪問看護師経由で主治医に来ていただき、最後の確認をしていただきました。
余命3ヶ月と言われながら、がん治療ができないにもかかわらず、その後約2年半に渡り、母が生き続ける事ができたのは緩和ケアによるものと言って過言ではありません。緩和ケアは単に痛みを和らげるということではなく、司令塔としての訪問スタッフや院内での連携等、患者を取り巻く環境全体に目配りしながら、いかに患者の生活の質を向上させるかが緩和ケアの本質なのだろうと、母の療養介護の経験から実感しました。
母の介護が終わって約2年半経ちましたが、今でも緩和ケア科、訪問スタッフ等への感謝は忘れられません。
余命宣告より3倍以上生きられたのは緩和ケアに切り替えたから
その他のがん / 80代 / 男性
(ご家族)
忘れもしない2019年10月13日。
「お父さんに殺される!」
母からの電話だった。何を言っているのか訳がわからなかった。父は末期癌で自宅療養だった。その頃にはもう歩くことができなくなり、一日中ベッドの上で過ごしていた。そんな父が起きあがり母を押し倒し、自分の鼻についている酸素チューブを剥がし母の首に押し当て、鬼の形相で母を睨みつけたという。
なんとか父を押し退け、隣の家に電話をし助けを求め、次に私に電話をしてきたのだった。私にすぐに来てと言っても5時間はかかるのに…。
「隣の夫婦来てくれたから切るね」
と言われ電話は切れた。
どうすりゃいいんだ私。涙が止まらない。5時間かけて実家に帰った。
家に着き母、隣の夫婦、訪問診療をしてくださる医師と話をした。
隣の夫婦が家に来て父に
「どうしたん?」
と話しかけると父は
「助けてください。殺される。」
と言ったそうだ。医師によるとそれは『せん妄』だと。せん妄なんて言葉初めて聞いた。父は医療用麻薬を使っていた。その麻薬と酸素も刺激になっている。やっぱり麻薬は魔の薬なんだと思った。麻薬と酸素を止めることにした。もしお母さんに危険が及ぶ事になったら入院も考えた方がいいんじゃないかと提案された。母は頑なに拒んだ。病院に行ったらベッドにくくりつけられすぐ死んでしまうと。元看護師としての意地もあったのかもしれないが母の愛だろう。
父の癌発覚から1年になろうとしていたがその間、母は家をリフォームしたり介護用品をレンタルしたり訪問医療はもちろんのことものすごい知識とつてを使って生活していた。私達家族もほんの少しは手伝っていたけど今回は違う。母は私に
「もう少しいてくれる?」
と。ここから母と私の本格的介護生活が始まった。不思議と下の世話も嫌ではなかった。子育ての経験があるからなのか自分の親だからかはわからなかった。麻薬を止めるとおかしな言動もなくなり普通に会話することもできた。
父は肉腫という皮膚癌だった。色々やってはみたものの癌は増殖する一方で余命数ヶ月と言われ緩和ケアに移った。しかも自宅へ帰りたいという父の願い、自宅でできるとこまでやってみたいという母の決意のもと、それを支えてくださる地域医療の皆様の協力を得て自宅療養だった。
余命宣告より3倍以上生きられたのは緩和ケアに切り替えたからだと思う。さいごの1ヶ月に騒動を起こしてしまったがそれ以外は本当に穏やかに過ごしていた。緩和ケアにして自宅療養にして本当によかったと思っている。
(企画担当者からのコメント)
せん妄は薬剤の影響以外にも症状や環境の変化などさまざまな原因によって起こります。もしせん妄の原因について気になることがありましたら、主治医や担当医にご相談ください。
令和3年度厚生労働省委託事業
コロナ禍における緩和ケア
自身ががん患者になった訪問診療医が語る「在宅緩和ケア」
コロナ禍となり、病院の面会制限により自宅で過ごすことを希望する患者さんが増えています。しかし感染対策を行うべきは病院も在宅も同様であり、在宅医療に関わる医療者の負担も少なくありません。今回は訪問診療医として活躍されている関本クリニック院長の関本剛先生に、コロナ禍における在宅緩和ケアの実際についてお話を伺いました。患者さんの希望にあわせて、必要に応じて緩和ケア病棟も利用しながら、自宅で過ごせるような診療を心がけておられます。
令和2年度厚生労働省委託事業